【島田荘司作品】本格ミステリ・御手洗潔シリーズを紹介する!【前編】

「御手洗潔シリーズを語る!」と書かれたアイキャッチ画像(書影付き)

1.御手洗潔シリーズとは?

御手洗潔とその友人石岡和己が様々な難事件を解決するシリーズ。

スピンオフも含めると2023年9月時点で合計30冊以上が刊行されています。

2.既刊紹介

※記事内のURLは商品の参考として載せているものです。リンク先からご購入される場合には、必ず各自の判断でお願いいたします。

2‐1.占星術殺人事件

シリーズ第一作にして衝撃の作品。

密室で殺された画家が遺した手記に書かれていたのは、六人の処女の肉体から完璧な女(アゾート)を作る計画。
その画家の死後、実際に女性たちが行方不明となり、バラバラになって発見される。
事件から何十年という年月が経過してなお解かれていない殺人事件の真相に、御手洗潔が挑む!

物語の最初の方は画家の手記によって構成されています。正直言うと、読書が好きじゃない人にとってはかなーり退屈です。
そして読みにくい。
とても分厚い作品なので、ここで挫折する人もいるんじゃないかなというくらい。

しかし加速度的に面白くなっていくので、頑張って読みましょう。
慣れればすらすら読めます。

途中には読者への挑戦状もついており、ミステリファンほいほいとなっております。

御手洗潔シリーズに共通して言えることですが、事件のトリックがとにかく理詰め。
物理トリックが多めで、パズルみたいに論理的に解き明かすことができます。
それがとても面白い!

私は実を言うと物理トリックが苦手で、「なんかよく分かんないけどそうなんだー」と思いながら読み流してしまうタイプなのですが、この御手洗潔シリーズは特別で、ちゃんと理解して楽しめます。

理系分野が苦手な方にもオススメ!

また、一作目から既に御手洗潔の変人ぶりがいかんなく発揮されており、素晴らしいです。
彼の珍行動を見るのが楽しい。
変人観察が好きな方もぜひ読んでみてください。

推しポイント✨

  • 記念すべき第1作!御手洗潔登場!
  • 緻密な論理が面白い!

2‐2.斜め屋敷の犯罪

シリーズ第2作。

斜め屋敷と呼ばれる奇妙な建物の中、不可能に思える密室での殺人が立て続けに起こる。

警察もお手上げとなったところに颯爽と現れるのが、我らが御手洗潔。

華麗に事件を解決する。

推しポイント✨

  • 大胆な物理トリックの衝撃がすごい!
  • 御手洗が途中まで全然出てこない!笑

2‐3.御手洗潔の挨拶

4つの短編からなる短編集です。

  • 「数字錠」
    数字錠が掛けられた密室で起きた殺人事件を御手洗潔が解決する。殺人の手口以上に、御手洗潔の人間性が光る1作。
  • 「疾走する死者」
    マンションの11階から姿を消した男が、13分後、走る電車に飛び込んで死ぬのだが、その場所は全力疾走してもたどりつけない距離だった。一体どういうこと!?
  • 「紫電改研究保存会」
    ある男が昔経験した奇妙な出来事について語り、傍で聴いていた御手洗が事の真相を解明する。超面白い。
  • 「ギリシャの犬」
    たこやき屋の盗難、謎の暗号、子どもの誘拐と続いた一見すると何の関係もなさそうな事件を御手洗が解決する。

推しポイント✨

  • 御手洗潔の人間像が浮き彫りになっていく。かっこいい。
  • どの短編も短くスッキリ解決するので、サクサク読めて楽しい。

2‐4.異邦の騎士

主人公の「俺」は記憶喪失の若い男性。
記憶が戻らないまま、石川良子と名乗る女性とともに新生活を始める。一見すると順調に進んだ新生活だが、やがて自身の過去が気になって色々探るようになる。
すると、妻子が亡くなっていることが判明。さらに、自分は妻子の死の原因となった2人の男に復讐をもくろんでおり、すでに1人を殺した後だったらしい。

そのことに気付いた「俺」は、残りの復讐を遂げるべく足を踏み出す――

ファンからの人気がものすごく高い一作です。私も大好きです。

推しポイント✨

  • 「俺」の正体
  • 御手洗潔がかっこいい!!!!
  • 最後までページをめくる手が止まらない構成の巧みさ

2‐5.御手洗潔のダンス

4つの短編からなる短編集です。

  • 「山高帽のイカロス」
    人間は空を飛べると信じていた麻薬中毒の画家が、ある日、電線に引っ掛かって死んでいた。あたかも飛んでいる最中であるかのように。画家と親しかった青年に頼まれ、御手洗が謎を解く。
  • 「ある騎士の物語」
    マドンナ的存在である女性と、彼女を取り巻く男たちの物語。御手洗潔の自称フェミニスト発言が興味深い。
  • 「舞踏病」
    年のせいでボケてしまった老人と、その老人をつけねらう連中の戦い。御手洗潔の奇行に石岡君が振り回される。
  • 「近況報告」
    これは短編というかファンサービス。御手洗&石岡の住まいの見取り図や普段の生活が紹介されている。

2‐6.暗闇坂の人食いの木

いわくありげな暗闇坂とそこにある巨大な楠の木(大楠)が今回の犯罪の舞台。

2000年前からあるとされる大楠には、「人を喰う」「中に人の死骸がある」とのうわさがあり、人々から恐れられていた。
実際、戦時中には大楠の木の枝に女の子の死体がぶら下がっているのが発見されたことがあり、その事件は未解決のままだった。

時は流れて現在、戦後。
大楠のある屋敷の屋根で、藤並卓という男の死体が見つかる。
彼は屋根にまたがって大楠を見るような姿勢だったという。
この奇怪さに興味を惹かれた御手洗は、半ば強引にわたりを付けて、調査に乗り出す。

重厚な本格ミステリです。大大大好き!!!!

推しポイント✨

  • 犯人の動機が切ない……
  • レオナさん初登場!
  • 御手洗さん性格良い。優しい。
  • 過去と未来の様々な事件が繋がって一つの大きな絵を描き出すのがすごい!

2‐7.水晶のピラミッド

3層構造の壮大な本格ミステリ。

第一層は、古代エジプトでの、ファラオの息子・ディッカと彼を助けた少女・ミクルの物語
ミクルは小さな島の中で暮らしていたが、幼い頃に流されてきたディッカを助けたことで彼に惹かれ、成長した後、はるばるギザまでやってくる。

そこでディッカからの寵愛を受けるのだが、それを快く思わない者たちも多く、不穏な雰囲気が立ち込めていた――

第二層は、タイタニック号の物語。
あの有名なタイタニック号に乗船していた歴史学者と小説家が、ピラミッド研究や文明の盛衰について語り合う。

そして沈没したのち、小説家のジャック・ウッドベルは、船室の中で、冥府の死者アヌビスのような姿をした異形のものと出会う……

第三層が、今回の本題。
映画撮影に挑むレオナたちの物語。

映画製作にかかわる、さる実業家の男が空中30メートルの密室で溺死を遂げるのだが、レオナたちは何としてでも映画を完成させたいので、事件解決のために奔走する。

シリーズの中でも特に大好きな一作です。
これぞ島田荘司!これぞ御手洗潔!

交錯する過去と未来、ファンタジーの世界に迷い込んだかのような不可能犯罪に、奇妙な出来事の数々。

それらを見事に解き明かす幕引き。

最高です。

推しポイント✨

  • 古代エジプトの話が「悲劇版シンデレラ」って感じで切ない
  • タイタニックの悲劇が哀しい……
  • 終盤の御手洗の決意を込めた台詞が大好き。本当に好き。解決の仕方が素晴らしい。

2‐8.眩暈

大スター旭屋架十郎の一人息子・三崎陶太は、香織という女性と2人、マンションの一室で暮らしていた。陶太は環境問題に対して莫大な問題意識と関心を抱いている。

2人は穏やかな日々を送っていたが、ある日突然、香織に「『今日ですべてが終わりだ』って知ってる?」と聞いたことで、激変が生じる。

香織が我を失って暴れだし、秘書の加鳥とともに突如現れた強盗に殺される。

陶太がマンションの外に逃げ出すと、そこは核戦争後のように荒廃しており、恐竜まで現れる始末だ。

マンションに引き返した陶太は、『占星術殺人事件』の内容をまねて、香織の上半身と加鳥の下半身をつなげ、呪文を唱える。

……すると、なんと繋がれた死体がよみがえり、言葉を発した!

このことが書かれた手記を御手洗のもとにもたらしたのは、古井という教授。

御手洗と旧知の中である彼は、研究者の一人が突如疾走した後に残したこの手記を発見し、興味を抱いた。

古井はその手記を、精神に異常をきたしたものが描いたと考えているが、解釈に苦しんでいる。

一方の御手洗は、手記に書かれた内容がすべて真実だと考え、整合性のある説明を試みた。

果たして真相はいかに?

これもまた大好きな一作です。

最初だけ読むとどう考えてもファンタジーなのに、ちゃんと説明がつくというのがすごい、すごすぎる。

推しポイント✨

  • 陶太の手記の内容の突飛さ
  • 『占星術殺人事件』が再登場する!
  • 御手洗の人間離れした推理力
  • 珍しいアクションシーン

2‐9.アトポス

吸血鬼めいた伝説をテーマにした1作。

まず最初に、エリザベートという昔の女王が自らの若さを保つために若い女性たちの血を欲して大量殺人を犯した歴史が語られる。

本題はその後。

現代。売れっ子ホラー作家のバークレイが何者かによって自宅で殺害される。
その犯人の姿は、彼が最期に書いた作品の終末と――そこに登場する変わり果てたエリザベートとよく似ていた。

一方、時を同じくしてロサンゼルスでは嬰児の誘拐事件が相次いでいた。
どうやら嬰児の体に目的があるようなのだが、その犯人の姿もまた、例のエリザベートにそっくりなのだという。

さらにそのころ、レオナ松崎は『サロメ』の撮影に挑んでいた。

ロケ地はイスラエル。砂漠の真ん中。

ところがそこで、次々とクルーが殺害されていく。挙句、レオナが犯人ではないかと疑われることに。

そこに駆け付けたのが御手洗潔。一連の事件の真相を看破する。

これもやっぱり大好きな一作です。

繰り返しになってしまいますが、過去と現在をつなぐのが本当に上手い。すごい。

推しポイント✨

  • エリザベートの話がおそろしい
  • 御手洗潔がかっこいい
  • 真相があまりにも苦しい……

2‐10.龍臥亭事件(上下巻)

不幸体質を自称する女性・二宮佳世は、おはらいのために中国地方の山間へ向かう。
何でも、そのあたりで霊気を感じる木の根元に手首が埋まっているはずなので、それを掘り起こすよう占い師に言われたというのだ。

御手洗がノルウェーに行っていて不在の中、石岡は二宮に同伴する。

旅先でたどり着いたのが龍臥亭という屋敷。
その屋敷には犬坊家の人々が暮らしているほか、逗留客も何人かいた。

すると、石岡らが訪れた矢先に、ことの演奏家である菱川幸子が何者かによって殺害される。
それも密室の中で、銃に撃たれて。
遠くから撃たれたと考えると銃弾の通る道がないが、近くで売ったにしては硝煙反応が無いし、現場は密室。

困っていると、なんと3週間前にも似たようなことがあって琴の師匠が死んでいたと分かる。

その後も、立て続けに不可解な事件が発生した。死体の山は増えていくばかり。

御手洗がいない今、石岡はどうするのか!?

推しポイント✨

  • 犬坊里美ちゃんの登場
  • 石岡君が1人で奮闘する!

2‐11.御手洗潔のメロディ

4つの短編からなる短編集です。

  • 「IgE」
    有名な音楽家が、数度あったきり消えてしまった女性に再び会いたいといって、御手洗を訪ねる。
    その調査の過程で、近くのレストランのトイレの便器が繰り返し破壊されていることが発覚。
    これはいったいどういうことだ!?
  • 「SIVAD SELIM」
    御手洗ファンの高校生からの依頼で、石岡は、彼らが主宰する外国人障害者向けのコンサートに顔を出すことになる。
    本当は御手洗を呼びたかったのだが、先約があるからと断られてしまったのだ。
    さて、石岡は無事に自分の役割を果たせるのか?
  • 「ボストン幽霊絵画事件」
    アメリカにいたころの御手洗の活躍。看板の文字が銃撃されていた些細な出来事をきっかけに、御手洗が大きな犯罪に気が付く。
  • 「さらば遠い輝き」
    大スターとなったレオナが、御手洗と親しくしているライターから御手洗のことを聞く。

推しポイント✨

  • 心穏やかにサクサク読み進められる
  • 御手洗さんの石岡くんに対する愛情が伝わってくる
  • 御手洗さんすごすぎ

2‐12.Pの密室

中編ふたつから構成される、御手洗の幼少期エピソード。

御手洗の幼少期の友人・鈴木えり子と、石岡・犬坊里見の二人が知り合う。
石岡は、犬坊里見の先導で、御手洗の幼少期の活躍を知ることとなる。

  • 「鈴蘭事件」
    えり子の父が事故を起こして死ぬが、えり子とえり子の母は、その死に不信を抱いている。
    また、えり子の両親が経営するバーでは、大量のコップが割られて散乱するという奇妙な事件が起きていた。
    これは一体どういうこと!? 幼稚園児、御手洗キヨシくんが謎を解く!
  • 「Pの密室」
    著名な画家が、絵画コンクールの審査を自室で行っている最中に、愛人と二人で死亡する。
    現場は密室。他殺と考えられたが、手段が分からない。
    この謎に、小学生の御手洗キヨシ少年が挑む!

推しポイント✨

  • 幼少期の御手洗さんのことが知れる!
  • 特に「Pの密室」のラストが好き……悲しすぎて……

2‐13.最後のディナー

御手洗が渡欧した後の、石岡と犬坊里見の物語。

  • 「里見上京」
    広島の大学から東京のセトリス女子大に編入した里見が、石岡に会いに来る。
  • 「大根奇聞」
    里見の法学部の教授が、昔々の不思議な物語を解き明かしたがっている。
    なんでも、老婆が大根を盗んで行き倒れた人たちに分け与えたが、なぜか処罰されずに済んだというのだ。
    状況を聞くに、大根を盗んだことがバレなかったとも、温情をかけられたとも考えにくい。
    果たして、なぜ老婆は無事だったのだろうか?
    石岡が理由を考えようと頑張る。
  • 「最後のディナー」
    里見のゴリ押しで英会話教室に通うことになった石岡は、そこで大田原という男に出会う。大田原は著名な俳優の婚外子で、外国人の女性と結婚して子供をもうけたのちに離婚しており、今はクリスチャンとして独り身で生活している。
    そんな大和田が、英会話教室をやめた直後、何者かによって殺害された――彼の身に何があったのだろうか? 石岡は頭を悩ませる。

推しポイント✨

  • 里見ちゃんがかわいい
  • 年の差コンビっていいなあと思った
  • 御手洗さんがいない中で頑張る石岡君がえらい!

2‐14.ハリウッド・サーティフィケスト

女優パトリシア・クローガーが何者かによって殺害され、子宮を奪われたところから物語が始まる。
同じころ、レオナのもとに正体不明の記憶を失った女・ジョアンが現れる。
ジョアンはイアンという男とかつて恋仲にあったといい、彼から聞いたケルトに関する物語を次々と語る。
また、女優を目指しているらしく、レオナのツテを頼って端役をもらうなどする。

パトリシアとレオナが親友だったことから、次はお前だと名指しされていたレオナだが、実際に襲われたのは別の女優だった。

レオナは親友の仇を打つべく、事件の解決に乗り出す。
ジョアンの恋人だったというイアンが怪しいと睨むのだが、果たして真相は――?

ちなみに御手洗はほとんど登場せず、電話でレオナにアドバイスするのみ。

推しポイント✨

  • ショッキングな事件に引き込まれる
  • ジョアンの過去が気になってドキドキした
  • 衝撃の結末!

3.登場人物紹介

御手洗潔

奇行が多い天才肌の探偵。その時の興味に応じて職業がころころ変わる。特に教育と医学に詳しい。

フェミニストを自称しているが、石岡君には女嫌いだと思われている。

犬が好き。

石岡和己

御手洗潔の助手であり、良き友人。いわゆる「凡人」だが、ミステリの知識は豊富。

松崎レオナ

世界をまたにかける大女優。自分の意見がハッキリしていて、気性が激しいタイプ。

御手洗のことが好き?

犬坊里美

女子高生(のち、女子大生)。天真爛漫で純粋な少女に見えて、小悪魔なところもあり。

石岡君のことが好き?

4.メディアミックス情報

「ミタライ 探偵御手洗潔の事件記録」という題でモーニングKCより漫画化されています。

また、玉木宏さん主演でドラマ化もされているようです。

5.まとめ

さてさて。長くなってしまうので、今回は一旦ここまで!

続きは後日別の記事で紹介します。

どの作品も面白いので、興味を持った方はぜひ読んでみてください!

それではまた!

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