【タコピーの原罪】コミックス上下巻を購入して読んだ感想!‐あらすじと登場人物紹介、個人的な感想
こんにちは。甘抹らあです。絵や小説を描く人です
今回は、2022年4月4日に単行本が発売された漫画『タコピーの原罪』について語ってみます!
この漫画は、2021年12月から2022年3月にかけてジャンプアップ+で連載された作品です。予想を裏切る展開や残酷な描写で読者をひきつけ、更新されるたびにwebで大きな話題になっていました。
私がこの漫画を知ったのは、2月末のことです。
そして、どうしてもっと早く読まなかったのか……と激しく後悔しました。
なぜなら、非常に面白かったからです!
単行本も、上下巻とも購入。
ということで、さっそくレビューをしてみたいと思います!
気になった方は、ぜひ買って読んでみてください!
下記サイトから、4話までは無料で読めます(2022年5月10日現在)↓
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496638370192
1.そもそも『タコピーの原罪』ってどういう漫画?
1‐1.あらすじ
ハッピー星からハッピーを広めるためにやってきた宇宙人・タコピー。
タコピーはピンク色のデフォルメされたタコのような、かわいらしい外見です。
そんなタコピーが出会ったのは、しずかちゃんという小学四年生の女の子。
おなかがすいていたタコピーにパンを与えてくれます。
喜んだタコピーは、お礼をするために、しずかちゃんをハッピーにしようとするのですが、なかなか上手くいきません。
しずかちゃんは、学校では虐められ、家では母親からネグレクトに近い状態にされており、父親は離婚して家を出てしまっていました。
そのせいで、飼い犬のチャッピーだけを拠り所に、ほとんど笑顔を見せない、希望を見いだせない日々を送っていたのです。
タコピーには、人間側のそうした事情が分かりません。
そもそも地球語をあまり理解していないし、感情面も未発達なのです。
そのせいで、しずかちゃんをハッピーにしたいのに、空回りしてばかり。
しかも、ハッピー星には何か事情があって帰れないらしくて……。
果たして、タコピーはしずかちゃんをハッピーにできるのか?
タイトルにある『原罪』――すなわち、タコピーが犯した罪とはいったい何なのか?
乞うご期待!
といった内容です。
1‐2.主観的な登場人物紹介
タコピー
本名は “んうえいぬkf” で、“タコピー” はしずかちゃんがつけた名前。
タコをデフォルメしたような外見で、見た目はとてもかわいい。
しかし地球人の文化や感情を正しく理解することができないので、いじめの相談をしている子供たちを見て “遊びの相談をしている” と受け取ったり、荒れている家庭を見て “にぎやか!” と喜んだりしている。
ハッピー星なるところから来た宇宙人で、ハッピー道具をたくさん持っている。
だが、ハッピー道具のほとんどは大して役に立たない。
久世しずか
タコピーが地球で出会った、笑わない女の子。
学校でのいじめ、両親の離婚、優しくない母親など、不遇な環境に置かれている。
現実に絶望しており、飼い犬のチャッピーだけが心の拠り所。
身なりはあまり清潔ではないが、美人(設定)。東くんから好意を寄せられる。黒髪&二重。
母親はキャバクラで働いている様子。
雲母坂まりな
しずかのクラスメートで、しずかをいじめている主犯。金髪。
「あはー」などの笑い方をよくする。頭が回るので、いじめ方がなかなか狡猾。
一方、家庭環境はしずかと似ていて不遇。父親がキャバクラでしずかの母親に溺れてしまい、大金を貢いでいるらしい。
そのせいで母親の情緒が不安定になり、まりなはそのとばっちりを受けている。
東直樹
しずかのクラスメート。しずかに想いを寄せている。
成績優秀で非常に真面目なのだが、天才肌の兄と比較されて育ったことで、コンプレックスを抱いている。
母親から認められたいという思いが強い。
性格は、優しいといえば優しいが、身勝手といえば身勝手。
小学四年生の男子にしては優しい&大人びているのかもしれない。
しずかやまりなと比べて、常識人でリアリスト。
目が悪くて、いつも眼鏡を掛けている。
東潤也
直樹の兄。天才肌で、勉強しなくてもテストは常に百点。彼女持ち。
チャッピー
しずかの飼い犬。大型犬。
しずか母
キャバクラで働いている(っぽい)。とても美人(っぽい)。
あまり子供の面倒を見ていない。しずかの父とは離婚済み。
しずか父
しずか母との離婚後、東京で暮らしているらしい。チャッピーをしずか宅に置いていった人。
まりな母
夫のキャバクラ通い(特にしずか母への入れ込みよう)によって、メンタルがボロボロになっている。
荒れ始めると手が付けられない。
まりな父
キャバクラに通い、特にしずか母に入れ込んでいる様子。
家では暴力的で、暴言がひどい。稼ぎはそれなりにありそう。
直樹母(東家の母)
医師。いわゆる教育ママで、子供を優秀に育てようとしている。
1‐3.その他の製品情報
ラインスタンプ
公式に販売されているものです。
https://store.line.me/stickershop/product/18912473/ja
「手乗りタコピー」ぬいぐるみ
単行本下巻を購入した人に抽選でプレゼントされる商品。(すでに〆切済み)
まりなちゃん&タコピーのペアアクキー
Twitterのプレゼント企画で配られた商品。(すでに〆切済み)
2.個人的な感想
2‐1.好きな点
まず、物語の重さが好みでした。
ドロドロとした大人同士の人間関係と、それに巻き込まれる小学生たち。
まりなのしずかへのいじめの描写や、まりな母のまりなへの接し方、直樹のコンプレックスなどが生々しく描かれていて、鳥肌が立ちました。
残酷なまでに徹底して闇を描いているところが好きです。
“表現がテンプレ的ではないか” “リアルではない”といった否定的な意見も目にしましたが、人によって何がリアルに感じられるかは異なります。
これはあくまでも1つの物語――つまり、世界にあまた存在する似たような事例のうちの1つにすぎない――ですし、少なくとも私は、これを読んで、心を抉られるような感情を抱きました。
したがって、そうした面での否定的な感想は持ちませんでした。
次に好きな点は、各々の悩み方の違いです。
主人公たちはまだ小学生であるがゆえに、自分で自分の環境を変えることが困難です(自立して一人で暮らすとか、相談機関に駆けこむとか)。
そもそも、自分たちの何が問題なのか、本質的には理解していないようなところがあります。
例えばしずかは、父が自分のためにチャッピーを置いて行ってくれたと信じていますし、“お父さんのいるところ” に対して、実際以上の憧れを抱いています。
※母親に対する感情はほとんど描かれていません。
また、まりなは、自分の母に縋って生きています。
本来であれば、キャバクラ通いで家庭を顧みない父親や、そのストレスで子供に八つ当たりする母親の方が悪いはずなのに、そのことには気づいていません。
むしろ、何の罪も無いハズのしずかに怒りを向け、いじめてしまいます。
さらに直樹(東くん)は、母の期待に応えたくて真面目に勉強を頑張っています。
何でもできて母からの心配と愛情を独占している兄のことを、毛嫌いしている節もありました。
そして、兄に適わない勉強の代わりに、苦境な立場に置かれたしずかを助けることで、自分を肯定しようとします。
こうした各々の苦しみの差異が、非常に興味深かったです。
それぞれの家庭環境や葛藤が、少しずつ明かされていく工程も、サスペンスのようで面白かったです。
次に好きな点は、今書いたように、ドキドキハラハラの展開が続くところです。
一体この後どうなってしまうのか、全く予想のつかないストーリーが続きます。
リアルタイムで連載を追いかけていた時には、いつも次の週が待ち遠しかったです。
この緊迫感が、とても面白いなと思いました。
ここまで読んで興味を持ってくださった方には、第4話までは絶対に読んでほしいです!
もしかしたら第1話だけだと、「あーはいはい、ループものね。いじめがテーマで残酷な感じなのね」で終わってしまうかもしれないのですが、第4話まで読めば、それだけの物語ではないことが分かります。
2‐2.単行本描きおろし分の感想
単行本には、描きおろしのおまけ漫画がちょっとだけ付いています。
ほのぼのとした内容で、キャラクターの個性がより明確に伝わってくる内容でした。
『タコピーの原罪』の世界観を少しでも多く楽しみたい方には、単行本の購入がおススメです。
2‐3.気になった点
ここからは多少批判的なことを書いてしまうのですが、いち読者の与太話だと思って聞き流してください。
私が引っ掛かってしまったのは、結末です。
終盤に差し掛かるまでは特に違和感を覚えることなく楽しんでしたのですが、ラスト2話くらい(特に最終話)に対して、色々思うところがあって……。
以下、具体的な感想です。
最終回のネタバレを含むので、未読の方はブラバしてください。
さて、物語は最終的にどうなるのか?
しずかとまりなが、“お話しすることが一番大事”という結論に回帰して、和解します。
直樹も兄の潤也と喧嘩することで和解した様子です。
そして、三人それぞれが大人に向かって歩き出します。
家庭環境そのものは改善できないし、様々な悲劇を防ぐこともできないんだけれど、それでも、“お話しすること”によって生き方を模索することならできる――といったメッセージを感じました。
この終わり方は、とても感動的です。
表現の仕方も非常に詩的で、「君が」を三連発するあたりでは目頭が熱くなりました。
最後の最後に未来の2人の姿を見ることができたのも、タコピーの痕跡がいたるところに残っているのも、すごく良いなと思いました。
こういう仕掛け、大好きです。
また、“お話しすることが一番大事”というメッセージ自体も素晴らしいものだと思います。
特に、暗い話題が多い世の中では、人間に対して、自分の将来に対して、あるいは世界の情勢に対して、絶望することが少なくありません。
残念なことに、“結局は力こそすべて”といった、乱暴な論理を振りかざす人もいます。
そしてその論理が、ある程度まかり通ってしまう悲しい現実もあります。
だからこそ、“いやいやそれはおかしいよ。ちゃんとお話ししようよ。お話すれば、分かりあえるかもしれないよ。最悪の事態は回避できるかもしれないよ” というメッセージに、痛切な思いを感じました。
主人公たちが小学生だからというのではなく、この漫画を読んだ大人たちも、改めて熟考すべきテーマだと思います。
さて。
これだけ絶賛しておきながら、何が引っ掛かったというのか?
それはしずかとまりなの和解がアッサリしすぎていたことです。
“お話が大事”と伝えたいのであれば、“どのようにお話ししたのか” “どうして解決できたのか” というプロセスを、違和感なく描くことが非常に重要だと思います。
そうでないと、“結局、これが成り立ったのはフィクションだからでしょ? 現実では力こそすべてじゃん” と言われてしまいかねないからです。
ですから、まりなとしずかがどのように和解したのか――タコピーという存在を通じて、というのは分かるのですがそれ以上に、まりながしずかに謝罪したのか、互いの心情をどのように理解していったのか、いじめはあの日からピタリと止んだのか等の細かい部分を見せてくれたら、もっと嬉しいなと思いました。
“まりながしずかに謝罪したのか” を私が重視してしまうのは、その時点において、しずかは完全な被害者以外の何者でもなかったはずだからです。
再三繰り返す通り、まりなが追い詰められた原因は大人たちにあります。しずかが救済されなかった原因も、――自分が他人を信用できなかったからというのを除けば――大人たちにあります。
そして、どうしようもなかったとはいえ、まりながしずかをいじめることで精神の安定を図っていたことは事実です。
ですからその点に関する詳細な相互理解と謝罪は、必ず必要だったのではないかと思います。
おそらく、描かれていなかっただけで、あの後高校生になるまでに、そうした過程は経ているのでしょう。
そこは疑っていません。
ただ、読者として漫画を読んでいると、あまりにも急速に和解して、急に救われたように見えてしまうので、そこをもっと膨らませてくれたら嬉しかったなと思いました。
補足しておくと、別の知人は、“この終わり方で全く問題ない。最高” と言っていましたし、また別の知人は “最後の分量は、これが妥当なところじゃない?” と言っていました。
ですから、あくまでも私の一意見にすぎません。
解釈次第で、色々な考え方が可能だと思います。
3.まとめ
以上、タコピーの原罪の感想をまとめてみました。
興味を持った方は、ぜひ読んでみてください!
それではまた!
甘抹らあでした。