【二次創作】二次創作文化の立ち位置と暗黙のルールについて【意義と論点】

虹を背景に絵を描く女の子

世の中には、二次創作という文化が存在しています。
既存の作品のキャラクターや設定を使って、絵や漫画、小説などを描くものです。
本編の内容に忠実なものもあれば、キャラ設定などを捏造しているものもあります。

漫画やアニメが好きな人であれば、存在自体は知っているのではないでしょうか。
PixivやTwitterで検索すると、たくさんの二次創作を見ることができます。

私は、進撃の巨人にハマった2013年、ネットで初めて二次創作というものに出会いました。
以来、様々な二次創作作品に触れてきました。
時には、自分自身が二次創作をすることもあります。

ところが、それをネットにアップしようかな? と考えた時にぶつかったのが、“暗黙のルール”という壁です。

二次創作というのはそもそも、厳密に言うと、原作者の著作権を侵害する行為です。
もしも権利者(著作権/著作者人格権の保有者)本人から訴えられたら、負けます。
法律的には、グレーゾーンというか、ほぼ真っ黒です。
あくまでも、作者の厚意で見逃してもらっているに過ぎません。

だからこそ、二次創作をする際には、きちんとルールを守らなくてはならないとされています。

しかし難しいのが、このルールが明文化されていないこと。
そして、界隈によって少しずつ違いがあることです。

私はどっぷり二次創作をしているわけではないのですが、様々なジャンルで活動している人たちを見ていて分かったことがあるので、それを今回まとめてみたいと思います。

参考にしたもの

 など

【そもそも、二次創作の意義とは何か】

まず最初に、二次創作に何の意味があるのかを考えてみます。

1.原作の宣伝になる

よく言われるのが、「原作の宣伝になるから作者も嬉しいんだよ!」というものです。

企業が広告を打つのには多大な費用がかかりますが、二次創作者たちは無償でたくさんの作品を生み出してくれます。
それを見て興味を持つ人が増えれば、無料で宣伝になるというわけです。

また、二次創作作品が増えることで、人々の間で話題に上りやすくなったり、結果的にTwitterのトレンドに乗ったりして、知名度が上がることもあると思います。

正直に言うと私自身は、人の二次創作を見てその作品に興味を持ったという経験がほとんど無い(元から好きな作品の二次創作しか見ない)ので、あまり実感が湧かないのですが、二次創作から興味を持つ人も少なくないようです。

2.クリエイター育成の場になる

もう一つ大事なのが、二次創作を通じて成長するクリエイターが少なからず存在するということです。

プロの商業作家さんでも、もともとは二次創作で人気を博していたという方や、プロデビューしてからも二次創作を続けているという方が少なからずいらっしゃいます。

二次創作は、原作のネームバリューがある分、一次創作よりも見てもらいやすいため、あまり知名度が無い段階のクリエイターには、「知名度を上げられる」「収入源になる」「作品を作り発表する練習となる」など、多くのメリットが生じるのです。

これによって、二次創作が、絵描きやアニメーター、漫画家などの人材育成の場となっています。

3.ファン同士で盛り上がれる

また、二次創作作品の多くは、「原作が好きすぎて愛情を爆発させてしまった!!」というものです。
つまり、ものすごい熱量が込められています。
創作に携わったことがある方なら分かると思いますが、よほどの熱量がない限り、二次創作なんてできません。

それだけの熱量を向けられる人同士であれば、感想を言い合って盛り上がることもできるでしょう。
直接やりとりをするわけではなくても、自分と似たような感想・解釈の人を見つけると、その人の作品を見たり読んだりして、楽しむことができます。

このように、同じ作品が好きな仲間同士で熱量を共有できるというのが、二次創作の良いところの一つかなと思います。

仲間がいることによって(また、二次創作作品が次々と生み出されることによって)読者は作品に飽きにくくなるので、結果的に、原作の売り上げが伸びることにも繋がりそうですよね。

原作者の中にも、自分の作品の二次創作をしてもらえるのが嬉しいと言っている方は多いです。
それは、ファンの熱量を感じることができるからではないでしょうか。

【一番大事なのは、作者に害をなさないこと】

この後、具体的に守った方が良い(らしい)ルールや、よく議論になっていることなどを見ていくのですが、その前に、一番大事なことを書いておきます。

それは、原作者(および権利者)に害をなしてはいけないということです。

何を当たり前な、と思うかもしれません。
しかしSNS等を見ていると、肝心の原作者を置いてけぼりにして、
「二次創作はこうあるべきだ!」
「その作品は解釈違いだ!」
「××するなんてありえない!」
などと喧々囂々の学級会が開かれていることがあります。
ですからまずはなによりも、『原作者が第一』というのを念頭に置くべきだと思っています。

具体的には、以下の三つです。

  • ガイドラインがあるなら、それを守る。
    作品によっては、公式で二次創作のガイドラインを出しているところもあります。
    その場合は、二次創作界隈のルールではなく、そのガイドラインを守りましょう。
    「普通は大丈夫だから」「どうせ訴えられないから」と、ガイドラインに違反するようなことをしてはいけません。
    また逆に、「普通は駄目だと思うから」と、ガイドラインでOKされていることを咎めてもいけません。
  • 原作者本人が意見を述べているのであれば、それに従う。
    もしも原作者本人が「こんなことはしないでほしい」「こうしてもらえたら嬉しい」などと意見を発信しているのであれば、それに従いましょう。
    Twitterなどを見てみると、自分でそうした意見を発信している方も、少なくないようです。
  • 犯罪目的は当然アウト
    海賊版を販売して違法に儲けたり、漫画村のようなサイトで本編を違法DLできるようにしてしまったりするのは、二次創作とは全然違うものであり、禁止です。

【よく言われていること】

続いて、よく言われている“暗黙のルール”を見ていきます。

※あくまでも、私がSNSなどで観測できた意見であって、明確にこうと決まっているものではありません。ご参考までに。
そしてより詳しいことについては、各自で確認をお願いします。
例えば記事の冒頭に載せた参考URLから辿ってもらえれば、色々な意見が見られると思います。

1.利益を出してはいけない

まず一番に言われるのは、利益を出してはいけないというものです。
二次創作は儲けるための手段ではなく、愛を表現するためのものにすぎず、二次創作者は「キャラをお借りしている」立場であることをわきまえろと言うことですね。

例えば同人誌の販売は、制作にかかった費用を売り上げで補う程度の値段設定が推奨されているみたいです。(私はコミケなどに参加したことがないので、聞きかじっただけの話ですが……)
そのため、制作費用がかからない形式(電子媒体など)で同人誌を販売するのはタブーだと聞いたことがあります。

同様の理由で、Pixiv Fanboxなどの有料コンテンツで二次創作を扱うことや、依頼を受けて二次創作イラストを描くことはマナー違反だという意見があります。
(※先述の通り、公式のガイドラインなどでOKが出ている場合は、当然そちらが優先されますが)

なるほどなーという感じです。
私も、もし自分の作品の二次創作でお金儲けをされたらモヤモヤするでしょうし、ご依頼でも他の方の作品の二次創作は受け付けていません。

ただ一方で、自分で絵や小説を描けない人からしたら、「どうしても見たいシチュエーションがあるから、他の人に二次創作として描いてほしい」と感じるのは自然なことですし、そこに対価が発生するのも納得できます。
実際、二次創作で報酬を得ている方もそれなりにいらっしゃいます。
その活動内容は、コミッションサイトなどで依頼を受けて描くもののほか、前出のpixiv Fanboxなどで二次創作を扱うもの、DLサイトで電子媒体の二次創作同人誌を販売されるものなど、様々です。

そして原作者側も、「利益を出しているから」というだけの理由で、特定の人の二次創作活動にストップをかけることは、あまり無いようです。

そのため、判断が難しいなとも感じています。

2.R18作品を大っぴらに出してはいけない

これは二次創作に限りませんが、SNSの公開アカウントで発表した作品は、年齢に拘わらず多くの人の目に触れます。
すなわち、R18作品が意図せずして未成年の下に届いてしまう可能性があるのです。

これを避けるために、R18作品は鍵垢やpixivなどのゾーニングができるサイトでしか公開してはいけない(Twitterの公開垢で発表する場合には、他サイトに投稿してからそのURLを張るという形にするべきだ)という意見を見たことがあります。

ただこれに関しては、
「プロフにR18だと明記してあれば、Twitterの公開垢でも普通に投稿してOK!」
「センシティブ設定さえしてあれば、Twitterでも普通に投稿してOK!」
「いや見る方が自衛しろよ」
など様々な意見があり、一様に定まっているわけではないようです。

個人的には、Twitter以外の場所にR18であることを明記して投稿してから、Twitterでお知らせしたい場合にはそのURLだけを投稿するという形を取るのが無難なのかなと思っています。

3.SNSなどにアップする際は、検索除けをするべき

純粋な原作ファンの中には、二次創作なんか見たくないという人も当然存在します。
そういった人の目に触れないようにするため、二次創作を投稿する際には、原作のタイトルやキャラ名をそのまま入れてはいけないというルールもあるようです。

また、「そもそも二次創作は著作権侵害なんだから、堂々と作品を発表するなんてありえない。誰にも見つからないように、水面下でコソコソと行うべき」という意見も耳にします。

そのために行われるのが、キャラ名の表記を若干変える/タイトルを略称で表記するなどの「検索除け」です。
要するに、他の人たちから見つかりにくいようにするということですね。
特に、独自の解釈や改変、捏造が多い二次創作や、キャラ同士の恋愛要素が強い二次創作などに関しては、検索除けをすることが推奨されているようです。

この意見も、確かにそうだよなあと思わされました。
原作が好きだからと言って誰もが二次創作を見たいわけではないので……。
上手な二次創作は見たいけど下手な二次創作は見たくない! という直截な物言いをする人もいます。

一方で、検索除けなんてなんのこっちゃ? という無頓着な界隈が存在するのも事実です。
むしろ積極的に二次創作を見たいから、検索しやすいようにどんどん公式名を使って! と言っている人もいます。
知り合いゼロの状態からネットで二次創作活動をする場合、ファン同士で盛り上がりたいにもかかわらず、検索除けをしていては見つけてもらうことができず、意味がないという声も聞かれます。

これらを聞いて個人的に思ったのは、純粋な原作ファン(二次創作文化に詳しくない人)が見て不快感を覚える内容か否かで、検索除けをするかどうか決めるのが良いのかなということです。

もちろん、二次創作が著作権侵害である以上、必ず検索除けをすべきだという意見も分かります。
ただ、二次創作はもはや文化として成立しており、原作者自身が拒否感を抱いていない(むしろ歓迎している)ケースは多いです。
コミケの存在はオタク以外にも広く知られていますし、様々な作品の中でネタとして二次創作が取り上げられることもあります。
二次創作畑出身のクリエイターも、非常に大勢いらっしゃいます。
それを思うと、二次創作は完全悪だ! と言ってことさらに排除する必要はないんじゃないかなという気がするのです。
その上で、そうした文化になじみがないファンの方々が不快にならないよう気を付けるべきだと感じました。

4.二次創作作品について、安易に公式に問い合わせてはいけない

同人界隈では、頻繁に様々な話題が炎上しているようですが、こと二次創作においては、そうしたトラブルを公式に問い合わせてはいけないというルールがあるようです。

例えば
「この作品の二次創作をネットで公開しても良いですか?」
「この二次創作作品は原作の品位を損なっていると思うのですが、いかがですか?」
「この方が販売している同人グッズは、公式の許可を得ているのですか?」
「この二次創作者が迷惑なので、法的な措置を取ってください」
などなど。

もちろん、問い合わせるか否かは究極的には個人の判断にゆだねられますし、どちらが正しいかは状況によると思います。
例えば海賊版が流通しているなら、しかるべき場所に通報した方が良いでしょう。

ただ、些細なことでいちいち公式に問い合わせてしまうと、二次創作を全面的に禁止される危険性があります。(せっかく黙認してあげているのに、わざわざ聞かれたらNOと答えざるを得ないみたいな……)
それを避けたいので、安易に公式に問い合わせるなという意見が出るわけですね。

特に二次創作界隈のトラブルについては、そんなこと公式に言われても迷惑なだけ……ということが多いのかもしれません。
公式に相談すべき案件かどうかは、慎重に考えた方が良いようです。

5.人を選ぶ内容の場合は、作品の冒頭に注意書きを入れる

特殊性癖や設定の捏造、自己解釈が含まれる作品については、冒頭でそのような注意書きのあることが多いです。
特殊性癖とまではいかなくても、「バッドエンドです」「シリアスです」等、作品の雰囲気に関する注意書きがされていることもあります。

これは一次創作にはない文化だと思うので、面白いなと思いました。
一次創作作品で――たとえば書店に並んでいる小説で――、冒頭に「死ネタ・グロ描写があります。鬱エンドです」などと書いてあることはまず無いですよね。
ネットでも、一次創作の場合には二次創作ほど注意書きをすることは少ないかなと感じます。

原作があるからこそ、原作と違う部分については細かく注意喚起する必要があるのかもしれません。

基準がよく分からないので、私が二次創作作品をアップするときには、見よう見まねで適当な注意事項を書いています()

6.絵柄を寄せすぎてはいけない

海賊版と間違われてしまう危険があるから、絵柄を公式絵に寄せすぎたらだめだよ! という意見です。

ただ最近は、原作そっくりの絵で二次創作をされている方も多いですよね。
意図的に頑張って寄せて描いて、周りもそれを称賛するというような。
そこまで目くじらを立てられる案件ではなくなりつつあるのかもしれません。

個人的には、明確に二次創作だと分かるようにしてあるならば(注意書きをするなど)、どんなに絵柄を寄せても問題ないんじゃないかなと思ってしまいます。
原作と違う色んな絵柄の作品があった方が、見ていて楽しいとは思いますが。

ただ、絵柄を寄せすぎた結果、模写と区別がつかなくなってしまうのは良くないかもしれません。難しいところです。

また、たとえ注意書きをしてあったとしても、すべての人がきちんと注意書きを読んでくれるわけではないので、公式商品だと誤解を与えてしまうような仕様のものは避けるべきかもしれません。

【その他の難しい部分】


最後に、より一層判断が難しいなと思う部分について書いてみようと思います。

1.果たしてどこからが二次創作なのか

例えば、自分の感想をイラスト付きでアップすることを考えてみましょう。
これはあくまでも感想が主体なので、二次創作とは呼べない気がします。
しかしそのイラストが、単なる落書きレベルではなく、ものすごくハイクオリティなものだったらどうなるでしょうか?

また、「このキャラってこんなこと言いそう!」「こんな展開があったらいいなあ」などの妄想を表現するのはどうでしょうか? 言葉で呟くだけなら、二次“創作”ではないでしょうか。
ではその妄想を、イラストや漫画、小説という形で表現するのはどうなんでしょう? これは、れっきとした二次創作でしょうか。
そしてその際に、参考文献や引用元として原作の情報を細かに提示したら、どうでしょう。論文などと同じで、原作を参考にした新たな創作物(いたって合法なもの)ということになるのでしょうか。

また例えば、10周年記念などで、作品のキャラを借りて一枚絵を描いてお祝いするのはどうなるでしょう?
原作に準拠しているなら「ファンアート」、そうでないなら「二次創作」と区別している方もいるようですが(というか私もそうですが)、どちらも英訳したら“fanart"なので、あまり意味がある区別ではありません。

次に、イラストや小説ではなく、手芸などで好きなキャラを作るのはどうでしょうか?
あるいは、キャラではなく作品の舞台や小道具を再現するのは?
そういった物の場合、ハイクオリティな作品を作って公開している方が多くいらっしゃいます。
中には、公式のイラストをそのまま流用したり、模写したりするケースも見受けられますが、販売するわけでもない限り、否定的な声は聞かれない気がします。

さらに、キャラそのものではなく、そのキャラをイメージした○○(ex.お菓子、布染め、アクセサリー、抽象画、etc)を作る場合はどうでしょう?
二次創作というよりも、オマージュか何かに該当するのでしょうか。
これらを発表する際に、先ほどまで見てきたようなルールは、適用されるのでしょうか。

またあるいは、同じ名前・同じ外見のキャラが出てくるだけの、設定が全然違う漫画を描いたら?
名前と外見以外の設定が全て異なる場合、オリジナルなのか二次創作の現パロなのか、第三者には区別できません。
ましてイラストがない小説なら、尚更です。
もちろん、普通は読めば分かります。みなさん二次創作であることは明記されていますし、偶然の一致でキャラ全員の名前が被る可能性は限りなくゼロに近いからです。
しかし、法律的に判断しようとしたら難しいかもしれません。

2.権利者以外が問題点を指摘するのは正しいのか

そして最初にも言いましたが、よく問題になるのが、この点です。

権利者以外が、他人の二次創作の問題点を指摘するのは、正しいことなのかどうか。

最初に結論を言ってしまうと、間違ったこととは言えないでしょう。誰しも表現の自由を持っているので、指摘すること自体は問題ありません。
また、問題点を指摘する人がいるからこそ、“やりすぎ”に歯止めがかかっている面もあると思います。

ただ、その指摘に強制力が生じることはありませんし、生じさせてはいけないと思います
先程まで見てきた通り、二次創作には判断の難しい面が多くあります。
つまり、絶対的な答えを持っているのは、その作品の権利者本人だけなのです。
その本人ですら、明確な基準は決めていないかもしれません。
ですから、それ以外の人が何か意見する際には、自分の意見が権利者の意見とは異なるのかもしれないということを常に念頭に置いておくべきだと思います。

【まとめ】

以上、二次創作について色々と見てきました。
原作者の意見を尊重しつつ、他者の気分を害さないよう気を付けながら楽しみましょうってことなのかな……というところです。
難しい部分もたくさんあるので、お互いに気を付けながら、気持ちよく活動できればなと思います。

ではまた。
甘抹らあでした!
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